住宅の引き渡し

これから、迎える年度末(1月~3月)期間は、一年の中で最も多くの住宅供給(引き渡し)が行われる期間となります。また、同時に最も住宅の品質が低下しやすい時期ともなるんですね。今回は、そんな「年度末の住宅引き渡し&内覧会」に関するお話です。

 

住宅(戸建・マンション)が未完成のまま、内覧会が行われる可能性のある時期が年度末(1月~3月)

 

私は、一級建築士として、数多くの住宅(大規模マンション、戸建て住宅)の設計・監理にも携わってきました。また、「内覧会同行検査」業務を通じて、多くの住宅内覧会に同行させていただいてきておりますが、そんな経験(実体験)の中から、最も住宅トラブルに遭遇する確率が高いのが、年度末となる「1月~3月」の期間となっています。

些細な住宅内部のキズ・汚れといった要素が増大するのは、もちろんのこと、「内装(床・壁・天井)の精度に関する不具合」「住宅設備機器(給排水など)の不具合」が増大するのも、この期間(1月~3月)なんですね。

「給排水管からの漏水」「雨漏れ」といった重大な施工不良もの大半は、年度末に引き渡し・内覧会を迎える住宅(建売戸建住宅、マンション)に多く見られる傾向があるのです。

それどころか、「共用部(エントランスや廊下など)が未施工(未完成)」の状態なのにも関わらず、内覧会を実施して、引き渡しを終えてしまおうとする・・そんな強引な手続きがなされる物件も1月~3月の年度末には、一定割合で存在していることは、ぜひ、認識しておいていただければと思います。

 

年度末(1月~3月)の引き渡し物件に不具合が増加する理由とは?!

 

それでは、何故、年度末(1月~3月)となると、住宅の施工不良・不具合が多くなるのかには、大きな要因があるんですね。それが・・。

『販売主の企業決済』

という要素なのです。直接的な原因は、もちろん、「施工の遅れ」が生じることで、内覧会・引き渡しに間に合わないというスケジュール的(工程)な要因に関連して、各種不具合・施工不良が増加します。

丁寧に施工している余裕もなくなり、多少、手荒な施工となっていても、とにかく、まずは完成させることが最優先となってしまうんですね。しかも、本来であれば、完成した場所から、不具合の有無などのチェック・確認をした上で、不具合があれば、それを手直しするのですが・・。

チェック・確認をしている余裕も無し。不具合の手直しなどもされないまま、とりあえず内覧会を迎えてしまおうとするわけです。

そんな状況を招く要因となってしまうのが、「販売主の決済」という要素なんですね。通常であれば、施工遅れが生じた場合、多少は、工期延長したり、予定工程内での調整が成されるのですが、年度末に引き渡し予定となっているような物件は、もともと通常よりもかなり厳しい工程が設定されているものが多いのです。

それは、何が何でも年度内に引き渡しを終えてしまいたい・・年度内で決済(売上計上)に組み込みたいという、売主側の都合によって、最初からかなり無理な工程で工事が成されるケースが少なくないからなのです。

また、大規模マンションなどでは、工期の途中で、売主側の決済上の都合で「完成の前倒し(年度内に完成する方向に)」が進められてしまうような物件も少なからず存在しているのです。実際、私も過去に大規模タワーマンションにて、年度内への前倒し完成の煽りによって、共用部がほとんど未完成のまま内覧会に立ち会うこととなった物件も2.3件ありましたからね。

 

契約上のトラブルにも要注意!

 

内覧会時には、まだまだ未完成・・引き渡し時にも、外構などが未完成のままというケースがあることから、何かと「契約上のトラブル」も発生してやすいことは、認識しておきたい要素です。

「予定していた引越し時期に関するトラブル」「未施工部分の引き続き工事に関するトラブル」「違約金や補償費用に関するトラブル」など、契約に関連したトラブル要素も多々発生するのが1月~3月の引き渡し物件なのです。

これから、すでに1月~3月時期に引き渡し予定の住宅を購入している方は、今のうちに(トラブルが表面化する前に)まずは、契約内容を再度しっかりと読み込み・理解することが大切です。

そうしておかないと、実際にトラブルに遭遇したときに、先方に言いくるめられてしまうようなことも、少なくありませんからね。どうしても、「キズや汚れ」などは、誰でも見つけることはできるものですが・・実際に、重大な不具合・施工不良に遭遇したときに専門的な知識がないと、「上手く対処が出来ない」もの。

「どのように判断するのが適切なのか・・」が、正直一般の方にとっては、なかなかわからないものですからね。

販売側は、年度末には、余裕が無いので、どうしても「補修・修繕などもなるべく少なくしたい」という意識が働きやすい時期ともなります。

「この状態で問題ないです」

「こんな感じの修繕方法とさせていただきます」

といった言葉が出やすく、その内容が本当に適切なのかどうかに、疑問を感じることも少なくないということは、ぜひ、認識しておいていただければと思います。

 

当一級建築士事務所では、「住宅内覧会検査」業務を行っております。概要は、こちらの記事(一級建築士による住宅(戸建、マンション)内覧会同行検査業務に関して)をご参照いただければと思います。